【読書感想ブログ】心理的安全性のつくりかた

参考図書

心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える | 石井遼介 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

心理的安全性とは?

心理的安全性とは

チームに対して自分の意見や質問等を気兼ねなく言えて、それを言っても非難や罰を受けたりしない環境のこと

ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授により提唱された概念で、Google の「効果的なチームはどのようなチームか?」という調査の中で『心理的安全性の高いチームが良い生産性を出していた』という結果を報告し、一躍有名になりました。

エドモンドソン教授は心理的安全性が高いかどうかの指標を出すために「心理的安全性を計測する7つの質問」を発表しています。しかし、日本でこの計測を行うと、米国との文化の違いにより質問の解釈にブレが生じ、うまく計測できないという事態になりました。

そこで、著者の所属している会社で、エドモンドソン教授の心理的安全性を踏襲しつつ、日本で心理的安全性を高めていくためにはどうすればいいかを研究し、最終的に、以下の4つの因子が重要であることを突き止めました。

日本版心理的安全性4つの因子

  • ①話しやすさ ・・・ 「何を言っても大丈夫」→ 率直に意見できるチーム
  • ②助け合い・・・「困ったときはお互い様の精神」→ 問題に対してチーム一丸となって対処できるチーム
  • ③挑戦・・・「とりあえずやってみよう!」→ 挑戦に失敗しても改善点を探し、繰り返し挑戦できるチーム
  • ④新奇歓迎・・・「異能、どんとこい!!」→ 個々人の個性が活かせているチーム

では、これらの因子を自分のチームで高めていくにはどのようにすればいいのでしょうか?この書籍では「行動分析」によってそれらを高めるアプローチを紹介しています。

行動分析

行動分析とは、『ある行動には「きっかけ」があり、行動の後には「みかえり」がある。「みかえり」によって、次の行動がきまる」』という理論から来ていて、行動を分析する場合にこの

「きっかけ」→「行動」→「みかえり」→「(次の)行動」

というフレームワークに当てはめることで、なぜその行動をとった(とる)のかを分析する手法のことです。

例えば、「ラーメン屋でご飯を食べる」という「行動」は、「お腹がすく」という「きっかけ」があり、ご飯を食べるという行動の後には「お腹が満たされる」や「おいしいと思う」などの見返りがあります。そうするとまた、お腹がすいたらまたこのラーメンを食べに来ようという気持ちが生まれ、同じ行動をとるようになります。

この行動分析を使って 先ほどの因子を分析してみましょう

「①話しやすさ」の行動分析

「①話しやすさ」を向上させる行動は主に「会話する」や「報告する」ことです。

例えば、部下から報告を受けたときに、その報告の質が悪かった場合、怒ったりしていませんか?

「君の報告はわからん、もっとわかりやすく説明してくれ」なんて言ってすぐに部下が対応できるのであれば、言われる前にしていますよね。なのでその指摘はあまりに意味がありません。

もっと言うと、怒ることで次から報告してくれなくなる可能性もあります。質も悪い上に報告もなくなってしまったのであれば本末転倒ですよね。

そういう場合は「報告する」という行動は維持しつつ、内容の質を上げていくことが重要です。

なので、まずは報告してくれたことに対してしっかり「報告してくれてありがとう」と伝えましょう。それが部下への「みかえり」となり次からも報告してくれるようになります。

その上で、報告内容について不十分な点があるのであれば、丁寧に相手に誠意をもって伝えていくことが重要です。

このように、話しやすさを向上させるためには「この人には話しかけても大丈夫なんだな」という気持ちを相手に抱かせるような対応が必要となります。

「②助け合い」の行動分析

「②助け合い」を向上させるための行動は「相談する」や「相談に乗る」等です。

基本部下は上司に対して話しかけることは気が引けますので、上司からシンプルに部下に対して「困っていることある?」等の声掛けをすることが重要です。

そして困っていることを吐露された場合、高圧的にならずに、同じ立場になって問題に取り組み解決しようとすることが重要です。

そうしないと「相談したけど、怒られた。今度からは相談しないようにしよう」と思われてしまいます。

このように、「②助け合い」を向上させるためには「相談するきっかけを作り」→「一緒に悩み」→「相談してよかったと相手に思ってもらう」ことが重要です。

「③挑戦」の行動分析

多くの組織では「挑戦する」ことは日常的なことではないので、挑戦する「きっかけ」を作るように心がけましょう。

おそらくこれは、ひとりできるものではなくチーム全体に理解を求めて、それこそ挑戦していくことになると思います。

ここでは挑戦するためのアイデアを一部紹介します。

例えば、グーグルでは、20%ルールというものを導入しています。「仕事に使う時間を分割して、少なくともその20%を、すぐに見返りを得られる見込みはなくても、将来大きなチャンスになるかもしれないプロジェクトの探索や取り組みに使う」というルールです。これはマネージャーレベルの人に進言しないと実現できないかもしれませんね。

また、「何か改善することはないか?」というふうに広く意見を募ると意見が出なかったりします。範囲を限定して意見を募ってみるのも一つです。「顧客の不平・不満、悩みや課題といった『顧客の負』を探し、それをなんとかできないかを考える」といったことを実践してみてもよいでしょう。

もう一つは「挑戦することを歓迎するよう進言する」ことです。例えば「これまでは正解があり、言われた仕事を淡々とこなしているだけでも問題がなかった時代ですが、これからは正解のない時代、挑戦無くして仕事はできません」といった話を交えながら、チームの同意を得れるように努力しましょう。

最後のアイデアは、何か手法だったりツールだったりを2週間ほど試してみて、取り入れたり、修正していったりを繰り返してみましょう。「試してよい」「自分たちに合わせて修正してよい」という雰囲気をつくるところから始めると、挑戦するハードルが下がり、よいサイクルが生まれるかもしれません。

書籍にも書いてありますが、こういうチーム全体の変革を必要とすることは難易度が上がります。ただ、難易度が高いからと言ってリーダー・マネージャーが変えてくれるまで待つのではなく、「自分が心理的安全性をこのチームに導入するんだ!」という強い気持ちをもって活動することが心理的安全性を向上する上で重要なファクターとなりますので、頑張ってください。

「④新奇歓迎」の行動分析

新奇歓迎とは個人の個性やその人らしさを大事にするということです。

とある研究結果でオペレーションセンターの新入社員を以下の3つのグループに分けました。

①個人のアイデンティティを重視する研修

②会社のアイデンティティを重視する研修

③例年通りの研修

それぞれのグループの顧客満足度を調査したところ。①のグループが33%も高いという結果がでたそうです。

研究結果のまとめには「ありのままの自分を認め、受け入れてくれる他者と関係を築くことで情報共有と協力しあう傾向が高まり、結果として生産性が上がる」と報告されていました。

では、自チームに新奇歓迎を起すためにはどうすればいいでしょうか?

それは「率直に個性を発揮することを促す」ことです。「このチームでぜひ自分自身の強みを発揮してほしい、チームメンバーの感情や仕事への敬意は忘れず、けれどもあなたらしく働いてほしい」といったことを伝えることが「きっかけ」となります。

うまくいかなくても「強味を発揮しようとしてくれてありがとう」と感謝を伝えることで「みかえり」となり行動の継続を促すことができます。

また、その人の個性を見抜き、その人の個性に合った仕事に最適に配置することをしてみてください。

心理的柔軟なリーダーシップ

また、この書籍には「心理的柔軟なリーダーシップ」という新たな考え方を提案されていました。

心理的柔軟なリーダーシップとはチームや個々人に合わせて臨機応変にリーダーシップの形を変えながら柔軟に舵取りをしていくリーダーシップのことです。

「今までがこうだったんだから、今もこうしなければならない」とか「この目標を達成するためにはこうするしかない」といった凝り固まった考えで進めるのではなく、チームを見て今できる最適解を探しつつゴールに向かうことができるリーダーシップのあり方を提案されています。

心理的柔軟なリーダーシップを行うには以下の3つの柔軟性が必要です。

①必要な困難に直面し変えられないものを受け入れる

②大切なことへ向かい変えられるものに取り組む

③マインドフルに見分ける

これらを少し詳細に見ていきましょう

①必要な困難に直面し変えられないものを受け入れる

「必要な困難」とは「否定的な思考や感情」のことです。

人は世界を色メガネで見ています。思い込みも多分に含まれているでしょう。ある人と意見が対立した時、「俺の意見が正しいのに」と相手を非難してしまいがちですが、相手を非難することは心理的安全性を下げる要因となってしまいます。心理的柔軟性において、考え自体が正しいかどうか、考え自体が真実かどうかは あまり重視しません。心理的柔軟性において重要なのは 今この状況で役に立つかどうか です。「役に立つ」とは「未来を予測でき、未来に(ポジティブな)影響を与えることができること」です。つまりは、

「チーム全体が納得のいく形でゴールに進められる」時が「役に立つ」ということです。

イヤなことがあった時、あなたはその感情をコントロールしようとするでしょう。メンバーを問い詰めたり、進捗を細かく報告するように求めたり、別のことを考えたりするかもしれません。これはイヤな気持ちを受け入れずにコントロールしていることになります。

イヤな気持ちをコントロールに集中してしまうと、それに労力をつかってしまい、本来のゴールにたどり着けない恐れがあります。

イヤな気持ちをコントロールすることは役に立たないばかりか、逆にコントロールすることこそが問題を作り出してしまいます。

「人生には苦痛があることがノーマル」だということを心底受け入れ、理解することが大事です

バグが出ても「このタイミングでよかった」「後工程で見つからなくてよかった」等 よい側面から見ること で、人にあたることなく問題に対処できるようになるでしょう。

②大切なことへ向かい変えられるものに取り組む

個人であれ組織であれ、行動を続けていくうえでビジョンの明確化は重要です。

我々は何のために今の仕事をやっているのか?どこに向かって進んでいるのか?進んだ先にある未来は?

そういうことをチーム内で共有しておかないと人はすぐに「やらされている」という気持ちを持ちます。

「やらされている」という仕事からはイノベーションは起こらず企業競争力は低下してしまいます。

そういう意味でも「チームが大切にしていること」と「私が大切にしていること」は明確にしておくべきです。

「私が大切にしていること」は仕事に限らず、心の底から大切だと思えることを自由に選択することが重要です。

また、大切なことは一つじゃなくてもよいです。

そして、大切なことが明確になった後は、大切なことに向かって着実に一歩一歩進むようにしましょう。

歩みを進めていくうちに困難が立ちはだかるときもあるでしょう。

その際に「失敗するんじゃないか」「恥をかくのではないか」とネガティブな考えが浮かんでくるかもしれません。

これは「柔軟性①」で扱った「困難な考え」そのものです。「困難な考え」はコントロールせずに受け入れ

着実に大切なことに向かって行動するようにしましょう。

③マインドフルに見分ける

マインドフルの意味をネットで調べてみると「〔人が周囲のことなどに〕気を配る、意識している」と出てきます。

この書籍でも「心理的安全性をチームに導入するためには、チームの反応を重視して柔軟に行動、やり方を変えていくことが重要」とあります。

要は、チームに気を配り、チームを意識して、決して独りよがりにならず、大切なことへ向かうことを行動を常に考えながら推し進めていくことが重要です。

そのためには、今この瞬間を「意識できているか」が重要です。今、この瞬間、我々は大切なことへ向かう行動ができているだろうか?

そういった気持ちを常に持っておきましょう。

過去、未来を疎かにしてよいという話ではありません。もちろん過去の失敗から学ぶことも重要ですし、ある程度未来を予測して行動しなければなりません。

とはいえ、過去・未来に縛られ大切なことへ向かう行動が疎かになってしまっては本末転倒です。

また、自分が今まで作り上げてきた自分像に縛られ、大切なことから離れるような行動をとることはやめましょう。

今の自分を客観視して、今の自分は大切なことに向かっていけているのだろうか?

ということを「意識」しましょう。

まとめ

この書籍に書いてあることって、すごく当たり前のことなんだなと思いました。

例えば、

  • 人とちゃんと話をしよう。

  • 人を卑下するようなことはせず、ポジティブな側面を観よう。

  • 挑戦している人を馬鹿にせず、応援しよう。

  • 多様性を受け入れ、協力していこう。

これってどれも当たり前のことなんですけど、仕事になると途端にできなくなってしまったりします。

私はQAチームのメンバーなので「開発はバグばかりだして、スケジュールも遅らせる。遅らせた分のしわ寄せは我々がとる羽目になる」

といった人をターゲットにした問題提起が頻発しているような気がします。

開発もチーム・組織の一員であり、開発チームもわざとそのように行動しているわけではないので、きっと「きっかけ」「みかえり」から

悪循環が生まれているのだろうなぁと思っています。

この書籍には、この「きっかけ」「みかえり」の行動変容のさせ方や、心理的安全性をチームに導入するためのアイデアについても

言及されているので、興味のある方はお手に取ってみてみることをお勧めします。