【読書感想ブログ】ラブカは静かに弓を持つ【ネタバレあり】
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以前紹介させて頂いた「5A73」同様、こちらも千原ジュニアYouTubeのチャンネルでカモシダせぶんさんが紹介されていた書籍です。
JASRACとヤマハ音楽教室が裁判で争っているのはご存じでしょうか?(私は知りませんでした)
ヤマハ音楽教室の講師が生徒に教える場合に演奏することは公衆の面前での演奏に該当するため音楽教室側は著作権料をJASRACに支払わなければならない。ということらしいです。私としては、トンデモな難癖な気持ちもありますが、現状最高裁まで判断が持ち越されているぐらいには意見が分かれているようです。これでJASRAC側が勝ってしまったら色々なところに波及しそうな気がしますね。できればヤマハ音楽教室側に勝ってもらいたい気持ちがありますが、著作権料を徴収することで生活できている人たちもいることを考えると複雑な気分ですね。
ということで、そんなJASRACとヤマハ音楽教室の抗争を題材にした話(もちろん名前は変えてあります)なのですが、主人公はJASRACの社員。上司に命令されて音楽教室に生徒として潜入して講師が無断で音楽を演奏してる証拠を集めるように言われます。要は潜入調査(スパイ)ですね。スパイものってなんか惹かれるものがないですか?007であったり、SPYxFAMIRYだったり。(SPYxFAMIRYは違うかw)
なんしか、私は、ばれるの?ばれないの?どうなっちゃうの~っ!?ってドキドキしながら次の展開を読むことができるので気になって一気に読んじゃいます。
主人公はチェロの生徒として2年間潜入するわけですが、講師の人もいい人で、同じ講師に教えてもらっている生徒の人たちとも飲み会で仲良くなっていきます。その中で、教室に通うことが楽しくなっていってしまう主人公は、自分がこの人たちを騙しているんだという罪悪感と戦いながら、毎回レッスンではボールペン型のボイスレコーダーにレッスンの内容を記録して上司に提出することになります。
こういう二面性を持ったまま生きることってなかなかに辛いことだと思うんですよね。私ならすぐに心がすり減ってしまいそうになります。人間って基本正直者な生き物だと思うんですよね。嘘をつくぞ!と気合を入れないと嘘は付けない。ましてや、好意を持っている人に嘘をつき続けないといけないとなると正気ではやってられないんじゃないか?と思います。
主人公がレッスンに通い始めて数ヶ月経ったある日、音楽教室内で発表会をすることになり、その曲を決めることになります。主人公は自分では決めれないので、講師の人に選曲をお願いするのですが、選ばれた曲が昔の映画『戦慄きのラブカ』の劇伴として使われていた曲。映画『戦慄きのラブカ』はスパイ映画らしく、今の主人公ともかぶるところがあるというのがにくい演出ですよね!!
また、この作者のクセなのか、心の描写が特徴的な部分がいくつかあって、例えば、主人公はチェロにちょっとしたトラウマがあって、チェロを見ると動機が激しくなってしまうのですが、その描写が「心臓が耳の横までせり上がって来たかのように、ボン! と音が大きく弾けた」という表現になっていて、心臓の鼓動を表す表現に「ボン!」という表現はなかなか使わないなぁと思ったのが印象的でした。この小説内でも度々「ボン!」は使われていて、単純に作者が好きなだけなのか?とも思っていますが。。。
それ以外にも、美人社員が序盤に言い寄ってきて不思議に思っていたのですが、後半でまさかの絡みがあって「そうきたか~!!」という感じでした。あまり、ネタバレを言うのもアレかと思うので、どういう展開になったかは皆さんで読んで確かめてみてもらえればと思います。
まとめ
やはり、本好き芸人のカモシダせぶんさんがオススメされる小説なだけあって、序盤から楽しめる作品でした。人を騙すことと人間の信頼関係について思いを張るとともに、人間は基本的には正義感も持っていて、誰も騙したいから騙しているわけではないのだろうなぁということを思ったりしました。できるだけ嘘をつかない人生でありたいものですね。