書籍
下町ロケット (小学館文庫) | 池井戸潤 | 日本の小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
いきなり苦難で畳みかけてくる
JAXAのエンジン研究員が佃が主人公で、初めは新型ロケットの発射実験を行うシーンから始まる。
ロケットが発射され、うまく軌道になるかと思われたが、あえなく失敗に終わる。
その責任から、佃はJAXAから去り、今は父親の町工場の佃製作所を継ぎ社長業に専念していた。
佃製作所は小型エンジンやその周辺部品を作る会社で、継いでから7年、業績も順調に伸び、順風満帆。。。
かと思われたが、大手取引先京浜マシナリーからの突然の契約終了宣言。売上の3割を失う事態になる。
その3割を銀行からの融資で補填しようとメインバンクに赴くが、渋い顔をされ追い返されてしまう。
そこに、追い打ちをかけるかのようにライバル会社のナカシマ工業からの特許訴訟が届く。
ナカシマ工業は特許訴訟に強く、技術に詳しい弁護士も多数取り揃えている。
佃の会社にも顧問弁護士はいるが、技術は門外漢の老弁護士。
第一回口頭弁論会でも相手の質問にしどろもどろ。目も当てられない結果となった。
裁判にもお金がかかるが、すでに売上の3割は失い、銀行にもそっぽを向かれている状態。
こんな状態ではいつ倒産するかわからない。どうなってしまうのか。。。
佃は妻とは離婚していて、家に帰ると娘が一人、テレビを見ている。声をかけてもろくに返事もしない。そういう関係。
悲しすぎる。。。
JAXAのエンジニアとして第一線を行っていたあの頃はどこへやら、不幸が不幸を呼びえらいことになっていた。
逆転裁判
そこに一本の電話が、元妻からであった。
元妻は佃の会社が訴訟を受けていることをニュースで知り、心配になって連絡をしてきたのだった。(なんだかんだで夫思いなのか?かわいいかよ・・・)
妻も佃と同じJAXAの研究員をしていた。妻は研究所に残り、佃は抜けた。その溝が埋まらず離婚という結果になった。
なので今も妻は研究所つながりで技術に強い弁護士を幾人か知っているらしい。その一人を佃は紹介してもらった。
その一人はナカシマ工業お抱えの弁護士事務所から喧嘩別れした弁護士らしく、相談に行くと二つ返事でOK。
なんだかんだあって、ナカシマ工業との裁判もその弁護士のおかげで勝つことができ、和解金56億円を手にすることとなる。
一難去ってまた一難
時間は少しさかのぼり、佃製作所がナカシマ工業と裁判で争っているときだった。
帝国重工の制作している新規開発ロケットのエンジン部分が佃製作所が保有している特許に抵触することが分かった。
社長の意向でキーデバイスとなる部分は自社製造することになっており、
特許使用料を払って自社で製造するか、
特許を買い取って自社で製造するか、
その二択だったが、佃製作所は裁判で資金がすぐにでも欲しいだろうと踏んで、特許を買い取ろうという流れになる。
しかし、佃は特許を手放してしまうことは避けたかったため、その要求を突き返す。
帝国重工側は打つ手がなくなりどうしたものかと考えていたところ、裁判の決着のニュースを知り
結局、特許使用の方向で依頼することになる。
しかし、ここもで佃は特許使用ではなく、佃製作所で部品を製造して納品させてくれないか?という提案をする。
社内でも大部分の社員が反対した。特許使用であれば、年間5億の売上があがるが、部品製造の場合、納品後に不良が見つかった時の
巨額賠償のリスクがある。場合によっては数百億円の賠償になる可能性すらあるのである。それを考えたとき
安全に儲けられる特許使用のほうがいいというのが、ほとんどの社員の意見だった。
「社長は会社を私物化している」「社長は我々社員のことなんでどうでもいいんだ」
そんな声がどこからともなく聞こえてくるありさまだった。
しかし、佃はその意思を曲げず、部品製造を帝国重工に提案するのであった。
帝国重工側でも意見が分かれたが、最終的には佃側の意見を受け入れ、バルブシステムを外注する形となる。
途中で、社員とも和解し、会社を上げて、バルブシステムを帝国重工に納入することとなった。
ロケット打ち上げ
佃製作所のバルブシステムを組み込んだ帝国重工が手掛けた新型ロケットが、幾多のテストを潜り抜け、発射当日。
佃製作所の社員一同 + 佃の家族が見守る中、ロケットのカウントダウンが開始。
3, 2, 1, リフトオフ!
ロケットは轟音とともに宇宙の彼方へと消えていく。
順調に第一エンジンの切り離し、第二エンジンへの点火を行うアナウンスが流れ
その後、ロケットは無事衛星軌道に乗ることができるアナウンスが佃の耳に届く。
佃製作所のバルブシステムを積んだロケットは無事成功したのであった。
感想
はじめの大口顧客からの契約終了 & 特許訴訟のダブルパンチ + 銀行の貸し渋り という
3重苦で、この後どうなるんだ感がすごかったです。私としてはこの話は特許問題の話を
解決させて終わりかなと思ったら、そこはまだ序の口で、その後、大企業相手に
中小企業の佃製作所が一歩も引かず、部品納入までして、なおかつちゃんとロケットも
飛ばして見せるという離れ業を繰り出して ジ・エンド。
この大団円を最高と言わずしてなんというのか。という気持ちでした。
下町ロケットはいくつかシリーズがあるようなので、他のシリーズも見てみようと思いました。